人種差別?Black Lives Matter って何?

 

 

私は27歳女子、現在約4年弱のアメリカ留学を終えて、日本に帰る準備をしているところです。私の自己紹介ブログはまた後ほど更新する予定なので、その時にまたチェックよろしくお願いします(*^^)v

 

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Black Lives Matter

 

2020年も半分が終わりましたが、世界中でまだまだコロナウイルスが猛威をふるっており、アメリカでは、3月後半から本格的に ”quarantine (隔離)” が始まりました。それからもう3か月以上経ちますが、あまり状況は変わらぬままで、ほどんどの商業施設は営業時間や営業形態を制限されています。

 

しかし、アメリカ国内ではコロナウイルスとはまた別の問題が注目されています。

 

皆さんは、”Black Lives Matter"というフレーズを耳にしたことがあるでしょうか?直訳すると、「黒人の命には価値がある」となるのですが、なぜ今このフレーズがアメリカ中で注目されているのでしょうか。

 

“Black Lives Matter” は、2013年に当時17歳の黒人少年が白人警察官により射殺された事件をきっかけにハッシュタグとしてソーシャルネットワーク上に初めて登場しました。アメリカでは、黒人が警察官によって殺されたり、意味もなく暴力を受けるのは、よく見られる光景で、警察官と黒人が話している場に出くわすと周りに緊張が走ります。理不尽な理由で、警察官により被害を受ける黒人たちが日々、後を絶ちません。

 

このウェブサイトは英語なんですが、無実にも関わらず警察官に殺されてしまった黒人被害者の情報を公開しています。私は、実際に殺害された人数の多さと、理不尽さに驚きを隠せませんでした。このような事件が現在も起きている事を考えると怒りがこみあげてくると同時に、記録されていない未発見のケースが他にも多数あると思うと心が痛みます。

- Know Their Names -

https://interactive.aljazeera.com/aje/2020/know-their-names/index.html

 

 

2020年 ジョージ・フロイド事件

 

5月25日ミネソタ州アフリカ系アメリカ人の黒人男性ジョージ・フロイド(George Floyd)が警察官の不適切な拘束方法によって死亡させられた事件をとらえたビデオがネット上に流れたことにより、アメリカ全土がこの残酷な事件に対して激しく反応しています。

 

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ジョージ・フロイド逮捕の様子

 

フロイドは、偽ドル札の使用容疑により手錠をかけられ、警察署に連行されている途中に、警察官に対抗したという理由で地面に押さえつけられました。警察官の一人がフロイドの頸部(首)を膝で強く押さえつけフロイドが「息ができない!こいつら俺を殺すつもりだ!助けてくれ!」と訴えていたにも関わらず、その拘束は8分46秒続き、フロイドの命を奪いました。

 

このビデオは、事件の一連(通報からフロイドが救急車で運ばれるまで)を解説しています。日本語訳はないのですが、10分未満の短いビデオですので、時間があれば見てみてください。

- How George Floyd Was Killed in Police Custody -

https://www.nytimes.com/video/us/100000007159353/george-floyd-arrest-death-video.html

 

 

私は、フルビデオを見ました。フロイドは地面に押さえつけられたが、抵抗している様子はなく、ただ必死に「体が痛い!助けてくれ!」と助けを求めます。しかし、彼はビデオの中で息を引き取ってしまいました。この時、私が気が付いたことは、この一部始終を撮影している人々が必死に警察官を止めようとしているにも関わらず、警察官は銃を手に彼らを脅したために、周りの人々は彼が殺されるのを動画におさめる以外何もでなかったということです。警察の傲慢さ、勢力を乱用している様子が明らかにうかがえました。

 

 

根深く残る黒人差別

 

黒人差別のルーツは、17世紀のイギリス植民地時代にまでさかのぼります。当時、イギリス人が開拓を進めようと、アフリカから移住して来た黒人を奴隷として厳しい労働を強制していました。その後、17世紀終盤にはアメリカの一部の地域で奴隷が一般化され、のちに商品化され、売買の対象になっていきました。

 

奴隷制は、南北戦争終了後の1865年に廃止されたものの、その後も少ない賃金と引き換えに、様々な労働を強いられました。さらに、1896年にアメリカの最高裁判所が「隔離はしても平等なら差別にはあたらない」という判決を下しています。実質的にそれまで続いてきた黒人差別を制度化し、容認することになってしまったのです。この制度は、「ジム・クロウ」と呼ばれ、 1954年まで続きました。この法律により、黒人市民は合法的に二流階級として生きていくことを強いられたのです。

 

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「ジム・クロウ」により分別された水飲み場

 

その後も、黒人は危険な犯罪者だというレッテルが貼られ、メディア上では、黒人が逮捕されるニュースばかり流されました。実際に逮捕されている黒人の比率よりも、はるかに高い頻度で黒人が逮捕される場面が報道されたのです。そして、「 ”危険な黒人たち” を皆、刑務所に入れてしまおう」と、黒人を中心とした有色人種を犯罪者とみなすシステムを政治家たちが作り上げていきました。

 

例えば、同じ犯罪を黒人と白人が犯したとしても、黒人犯罪者のほうが厳しい判決を受けたり、時には犯してもいない罪のために刑務所に入れられたりなど、不平等な正義システムが定着していったのです。

 

 

アメリカの犯罪処理システム

 

現在、アメリカでは、230万人が刑務所に入れられており、これは世界中の受刑者の25%を占めます。アメリカ全体の人口が世界人口の5%ということを考えると、アメリカがあまりにも多数の受刑者を抱えていることは一目瞭然です。その上、白人男性の17人に1人、黒人男性の場合3人に1人が生涯に一度は刑務所に入れられているというデータがあります。これは、ただ単に黒人がほかの人種よりも危険で、犯罪に手を出しやすい事を表しているのでしょうか?

 

黒人奴隷やジム・クロウ制度、不平等な刑事裁判システムを考慮すると、歴史的/政治的に、黒人たちのほうが白人に比べて圧倒的に社会から攻撃されやすい、と言えると思います。もちろん、犯罪を肯定するつもりはありません。しかし、もし危険な犯罪者を隔離し、市民の安全を確保するはずの政府と警察が手を組み、特定の人種だけをうまく刑務所に送り込んでいたり、殺害しているとしたら。そう考えると黒人受刑者の全員が、一概に逮捕されるに値する犯罪を本当に犯したのかどうか疑問に思います。

 

前科のある家庭出身の子どもたちにとっては、その負の連鎖の中から抜け出すことは不可能に近いです。地域によっては、ドラッグ売買する以外にお金を稼ぐ方法を知らない/ドラッグを扱うのが当たり前という環境で育つ場合もあります。この一連の連鎖をベースとした人種差別を、「Systematic Racism(システム化/組織化された人種差別)」と呼びます。政府や社会によって作り出された、計画的/伝統的な人種差別といえるでしょう。

 

 

社会的正義・平等の第一歩

 

ジョージ・フロイドの事件以来、アメリカ全土でたくさんのプロテストや暴動が起きています。私も、なぜこんなに沢山の人が今回の事件に対して激しく反応しているのか、実際のプロテストの現場で何が起きているのか不思議に思い、メリーランド州のロックビル(Rockvill, Maryland)のプロテストに参加しました。メリーランド州は、最も多くの人種が見られる州の一つであり、トランプ大統領が住んでいる州ということで、たくさんの人種平等を訴えるプロテストが行われました。

 

始めは、私も少し不安でしたが、いざ到着してみると、プロテストの力強さと人々の「現状を変えなければならない」という強い意思が伝わってきて、この歴史的運動を目の当たりにできることを誇りに思いました。また、黒人だけではなく、様々な人種がプロテストに参加し、黒人差別廃止に対して立ち上がっているのを目の当たりにして、胸を撃たれました。その時、私が撮影したビデオへのリンクがこちらになります。興味があれば、覗いてみてください。

 

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ソーシャルメディア上でも、”Black Lives Matter" の運動はたくさん見られます。多くの人が、プロフィール画像を真っ黒にしたり、真っ黒の動画を投稿して、#blacklivesmatter とハッシュタグをつけたり、今まで公に出ていなかった無実の黒人が殺害されたケースの情報を流したり、様々な形で人種差別反対に貢献しています。

 

このような小さな行動のおかげで、ジョージ・フロイドの殺害に関与した4人の警察官が全員、解雇され、殺人の容疑で逮捕されました。アメリカ国内で、貴重な social justice (社会的正義・平等)実現への第一歩となりました。

 

 

私が感じたこと

 

アメリカ内に人種差別が存在するのは、渡米する前からなんとなく知っていたのですが、幸運なことに、私自身が実際に差別された経験はありません。一番近い経験といえば、黒人の友人が警察官を目指していたのですが、白人の面接官からあまりにも雑な扱いを受け、自ら辞退したという話を聞いたことがあったくらいです。実際、私が住んでいたオレゴン州では、83%の警察官が白人で、多様性に欠けているのが事実で、もしかしたらこれも、差別の一部だったのかもしれません。

 

正直、このジョージ・フロイドの事件が起きるまでは、「黒人の人たちはなんで未だに奴隷制や差別に敏感なんだろう。もう150年以上も前のことなのに、いつも被害者ぶってばっかりだなぁ。差別されるのは、自分たちの行いが悪いからかもしれないのに。」と客観的に彼らが社会のせいにして悲観的になっている、と思っていました。

 

しかし、今考えてみると彼らが数百年もの間、理不尽な扱いを受けていた事を知り、それが今日も続いていると考えると、人種差別への見方が変わりました。もし警察官に止められている黒人を見かけたら、少し立ち止まって様子を見てみよう、とか、差別を受けている場面に出くわすことがあれば、ただ通り過ぎるのではなく、何かその場でできることをする。

 

こうやって自分が得た知識をシェアすることも、私のできることの一つかなあと思います。最後まで読んでいただき、ありがとうございます。このブログ記事によって、日本からは見えづらい ”Black Lives Matter” の問題についての理解が少しでも深まれば、嬉しい限りです。

 

 

ー 追記 ー

ジョージ・フロイド事件の10日後、一連の騒動に反応して、コロンビア地区の区長メリエル・バウザーが、ワシントンDCのダウンタウンエリアの一部のストリートを「Black Lives Matter Plaza」と改名しました。道路上は「Black Lives Matter」とペイントされ、今ではワシントンDCのモニュメントの一つとして、沢山の人々に訪れられています。

 

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Black Lives Matter Plaza

 

 

<  参考  >

”Black Lives Matter" をきっかけに歴史的/政治的な知識が全くなかったので、自分なりに勉強してみようと思って観たドキュメンタリーです。歴史的刑事正義システムの観点から、アメリカの人種的不平等を説明しています。日本語訳もあるので、もし、興味があれば観てみてください(#^^#)

- 13th(2016)-

https://www.youtube.com/watch?v=krfcq5pF8u8